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色の濃淡を問わず金髪の者、体格のいい者、銃を持っているいかにも強そうな者、アルフィナは一生懸命であったが、どの男も首を横に振るばかりである。いよいよ必死の顔になってきたとき、ルルーナがうしろからアルフィナの肩をつかんで体を半回転させた。
「ちがう、ちがう。いるでしょう、キッドさんなら」
「えぇっ?でも……」
アルフィナの反応に店内は実に愉快そうに笑い声をあげた。それはそうだ、やっぱりだ、信じないよなぁ、親しみのこもった揶揄の声が次々に聞こえてくる。
少女は目を疑った。彼女の目の前でカウンターに座っているのは、どう考えても小柄で、華奢で、確かに"坊や"であろうけれども、髪は褐色、銃は黒、瞳はヘーゼル・グリーンの……。
つまりキッドである。
驚きのあまり二の句をつげないでいるアルフィナに、小さく苦笑して、キッドが口を開いた。
「レディ。きみの窓口担当の男は、頭はきれいに禿げあがっていて、鼻の低い立派な白髭の爺さんだった?」
アルフィナは不思議そうな目をしたまま小さくうなずいた。
「クリミットの爺さんだ。生きていたとは思わなかった」
キッドが口の中で「なんてことだ」と呟いた。
「どうやら断れなくなった。オーケー、レディ。きみの姉さんはきっと助ける。礼はいらない。ハゲじじいからふんだくるから」
「それじゃ、本当にあなたが"払暁の"……?」
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