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「一部の人間が言ってるだけ。おれは…でも、そうだな、ノーバディ・キッドは無茶苦茶だけど悪くない。おれは名無しだからね、誰もいない(ノーバディ)のと同じことさ」 言いながら、キッドは帽子をかぶって立ち上がった。 「明日、東の広場においで。"水瓶座"がきみを歓迎するよ」 言って、お道化た様子でウインクした。そのキッドの笑顔に、瞬間、アルフィナは自分の全身に小さな雷が落ちたように思った。異常な予感が全身の神経を駆け巡る、その電気信号を脳が認識したような感覚であった。何かはわからない。だが、何かが起こる。 (待って。キッドさん。あなたは……) アルフィナは右手を小さく伸ばしたが、何故か声が出ない。キッドはひとりで酒場を出て行った。 「水瓶座?今あいつ水瓶座って言ったか?」 「水瓶座が来るのか?おい、見に行こうぜ」 男たちが騒ぎだした。アルフィナにはなんのことだがわからなかったが、誰にも訊ねる気分にはなれなかった。少女はじっと、名無しの青年が出て行った扉を見つめていた。  ルルーナが、そんなアルフィナの様子を見て心配したのだろう。優しく肩を抱いて話しかけた。 「大丈夫よ。あいつ、賞金首ったって女には優しいのよ」     
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