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エドクセン王国の町々には大抵どこかに広場があって、多くの場合、伝説の古代英雄"八つ星"や建国の父たるフィリツ家三代目タンリツェン大王など、偉人の像を中心に据えた噴水がある。付近に教会があることも多く、人々の信仰と交流の場として機能していた。余談だが、ここクルトペリオの広場は、町の規模に比してやたらに広い。宿なしどもがキャンプをするため、普通より広く作られたらしいとは出所の定かならぬ噂である。
噴水と聞いて、ちょっとでも自分の知っているところを見つけようと思ったらしい。トントールが指さした方向をアルフィナは背伸びして見た。確かに人々の隙間から噴水がチラリと見える。
「とりあえず行ってみよう」
「この人混みを?」
アルフィナが怯えた声を出したがトントールは笑って答えた。
「大丈夫!おじさん体が大きいから!」
太鼓腹を叩いておどけてみせた。トントールの愛嬌にアルフィナもやっとちょっと笑顔を見せて、頷いた。
トントールが先に立って人をかき分ける。アルフィナもはぐれないように一生懸命トントールの上着を両手でつかんでくっついていった。トントールとしては歩きづらかったろうが、肥満体で汗かきのトントールは手をつなぐのを恥じて、自分でそうしろと言ってしまったのだから仕方がない。
トントールの太った背中から離れないように注意しながらアルフィナは周囲を見回した。あまりの人出に足元の石畳ばっかり見て最初は歩いていたのだが、あまり賑やかで楽しそうな声があちこちから聞こえてきて好奇心が勝った。見ればたくさんの屋台が人混みの間から覗けてきた。
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