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 ある店は、たくさんの宝石を並べていた。色とりどりの石が真昼の陽射しに眩く輝いて美を競っている。ペンダントや指輪に加工された物もあれば原石のままらしいのも見えた。気取った貴族風の男が店の者と話している。厳めしい岩のような男もいたから、きっとあれも魔力のある石かもしれないとアルフィナは考えた。  様々な大きさの剣を並べた店では、アルフィナとそう変わらないような年頃の少年が父親らしき大人の手を引いている。父親はそれを無視して四十センチほどのダガーを手に取り眺めている。紫水晶のような不思議な色に刃が光っていた。  その他、怪しげな呪術道具を並べた店や、盾と鎧とを客に勧める店、花屋もいたし、大砲を一基置いただけの店もある。アルフィナにはほとんど意味がわからなかったが、人々が皆、この祭りを楽しんでいるらしいことはよくわかった。 「すごい…。本当になんでもありそう」 「わはは。だから言ったろう。でも、まだまだ。楽しいのはこっからだ」 体を揺すりながらトントールがアルフィナの背中に腕をまわして押し出した。 「顔を上げてごらん」 言われるままに顔をあげてアルフィナは息を呑んだ。  巨大なテントが目に飛び込んで来た。屋根は青白黄色の縞模様で、電飾のようにぐるりを飾るのは魔法で虹色に輝く水晶らしい。てっぺんに旗がある。均整の取れた筋肉の美しい男が頭上に(かめ)をかかげ、そこから星が注がれている絵が風に翻っていた。 「あの旗…。これが"水瓶座"?」 一生懸命に首を伸ばしてアルフィナが言った。     
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