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「つまり、こいつイカサマを金で買ってたわけか!」
客のひとりが軽蔑しきった声で叫んだ。己の能力でイカサマをしたならともかく、そこらの店で売っている魔法武器を買っただけで得意になっていたのだと判明したのだから、無理もない。しかもそれで負けて、更に相手こそイカサマだと喚きたてるとは、人間として最低だと唾でも吐き掛ける勢いである。
魔法世界である。だが、誰もが有用な能力を持つわけではない。生きるために、魔法道具を買うことも、それを使うことも恥ではない。だが、だからこそ、魔法禁止のゲームというのが一方で盛り上がるのだ。それはこの汚れた旅人も知っていたはずである。
「金に困っているなら、まずこっちを売ればそれなりになったろうに」
呆れ顔でそう言う者もあった。余程困窮していて、こんなやけっぱちの卑怯をしてしまったのだと憐れむようでもあった。総じて、何らかの魔力補助のついた魔法武器は値が張りやすい。通常よりも威力に優れ、時には持ち主の生来の魔力では御しきれない魔法の使用を可能にするなど利点は多いが、多い分の値段になるのである。この銃はそこまで強力な魔法がかかっているでもないが、それでも宿代と食事代ぐらいにはなったろう。
「デルーガの話も嘘じゃないか」
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