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言いながら、王女は右手をハンカチの上にかざした。アルフィナが占うときに似ている。掌から溢れる魔力の波動もアルフィナのものにそっくりで、やはり同じ血統の魔法であることは、水瓶座には明らかであった。  アルフィナとちがうのは、王女は目を閉じないことである。ライトブラウンの瞳を遠くを見るように少し細めて、口元にはなお微笑をたたえ、その顔つきは神話の女神のように慈愛に満ちた美しさである。その美貌をキッドはまた悲し気に見つめ、アルフィナもどこか切なげな視線を投げかけていた。 「見つけました」 王女が胸に当てていた左手もハンカチの上へ運び、宙に円を描くように両手を動かすと、微かにハンカチが虹色の光を帯びて、その上にどこかの港が映し出された。  夜。雪が舞っている。本降りにはまだ早いのか、チラチラと舞い落ちる雪に足元は濡れて光り、人々が家路を急ぐ姿が確認できた。その中に、海を見つめて佇んでいる背の低い男の背中がある。 「キッドだわ」 アルフィナが言った。王女も興味深そうに自分の魔法でつくった映像を覗き込んでいる。映像はキッドに近づいていく。ハンカチを持ったジェシーが、キッドに近付いたのだ。 『初めまして、坊や。あたしがジェシー・サダルメリクよ』 映像の中のジェシーが名乗った。キッドが今と同じ黒い山高帽を取って頭を下げる。その顔は今より少しだけ若く、だが、背後にひろがる冬の海のように暗い悲しみに沈んでいた。     
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