プロローグ

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幼い頃から俺は奇妙な夢を見ている。 その夢を見始めたのがいつだったのかは覚えていない。 だけど物心ついた時にはすでに見ていたようだった。 小さい頃、俺は夢の中での出来事をよく母親に話していたようで今でも「あの時のあんたは、奇妙な事ばかり言っていて正直怖かったわ」 と言われるくらいだった。 多分きっと、それが現実のように色鮮やかで鮮明で幼い俺には夢だと理解できなかったんだろうと思う。 この奇妙な夢は一場面を何度も繰り返したり、同じ場所や日時に止まったりはしなかった。 夢の中にも一日一日があり、本当に毎日を暮らしているように日々が過ぎていったからだ。 しかも、夢の中での俺も現実の俺と同じように体や心が成長していた。 つまり、俺が10歳になると夢の中の俺も10歳になった。 不思議なのはこれだけではなかった。 夢の中の俺は俺ではなかった。 顔や声はもちろん、背丈や体格も違う。 全くの別人だ。 友達や近親者に似ているような人もいない。 そして夢の中の家族や友達も現実の家族や友達とは誰とも似ても似つかなかった。 そして、夢の中の時代はかなり古かった。 正確にはわからないが電気やガスなんてものが発明されるずっとずっと前の時代だ。 歴史の教科書で見た挿し絵で一番似ていたのは平安時代だったが、確信は持てなかった。
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