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別に体調は悪くないけど、結月の気遣いを無下にはできないしとりあえず計ってみる事にした。
丸いすに座るとブレザーを脱ぎ、ネクタイを弛めシャツのボタンを3つ外す。
ふと、視線を感じて見上げると、結月と目があった。
「………何?」
何か変だったかと思って聞くと、「別に」と言って慌てて顔を逸らした。
数秒して、すぐにピピと電子音がした。
「37.8」
思ってたより微熱があって驚いた。
俺の手から体温計を取り上げた結月はそれを見て顔をしかめた。
「お前、昨日から調子悪いんだろ?顔色悪いし…。」
「別に…悪くないし…」
ただ、結月と顔を合わせるのが気不味いだけ…とは言えなくてもごもご口ごもる俺。
「とりあえず寝とけ」
結月は俺の腕を掴むと奥にあるベッドへ引っ張っていく。
優しいんだか強引なんだかよくわからない奴。
2台あるスチールベッドは天井から間仕切りのカーテンで仕切ってある。
片方のカーテンの中を軽く覗いて結月はそこに俺を押し込んだ。
「寝てろ」
掴んだ腕で舵を取るように俺をベッドに座らせる。
「この布団じゃ寒そうだな…」
結月はベッドの足下に畳んである布団の硬さを確かめるように触るとぶつぶつ呟いた。
「待ってろ。いや、寝てろ」
そう言うと、カーテンを閉めて出ていく。
何だか…すっかり病人扱いになってしまった。
微熱はあるものの横にならなきゃいけないほど体調は悪くない。
ガタガタと扉を開けたり閉めたりする音して、またカーテンが開いた。
結月の手には毛布が握られている。
「寝てろって言っただろ。」
ベッドの端に座ったままの俺を見て結月はまた怪訝な顔をした。
俺の肩を押すと横になるように促す。
何だかそれが押し倒されてるみたいに思えて、急に恥ずかしくなり俺は慌てた。
「いや!寝てなくて大丈夫だから!」
ぐいぐい倒してくる結月に抵抗して何とか起き上がろうとするけど、上からかけられる圧力の方が圧倒的に強い。
「大丈夫じゃないから顔色悪いんだろ!いいから寝てろ!」
抵抗する俺をベッドに寝かそうと更に強い圧力をかけられた。
体力のない俺はすぐに抗う力が尽きて、とうとうベッドに崩れてしまった。
「…っ!!?」
急に力の抜けた俺の身体に結月も一緒に崩れ落ちた。
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