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保健室の冷たい白いシーツに埋もれて声にならないほど泣いた。
心はズタズタに引き裂かれていた。
さっきまでそこにいた、結月の存在が遠くに感じる。
あの漆黒の眼差しはもう二度と俺を見ないだろう。
そしてもう二度と結月には触れられないだろう。
サクヤじゃない俺は、たとえ何度生まれ変わってもあいつとは絶対に結ばれない…
そう思うと、もう何もかもが無意味で虚しく思えてただただ悲しかった。
もうこのままシーツと一緒に真っ白になって消えてしまいたい…
ハヤトも結月もいない世界で、何もかも忘れてしまいたかった。
もう、あの『記憶』を見たくない…
どれくらいそうしていただろう?
保健室の扉が開き、カーテン越しに声が響いた。
「さくや?大丈夫?僕だよ、入るよ?」
朱琉だった。
頭からすっぽりと布団を被った俺に、朱琉の高い声が心配そうに声をかける。
「体調良くならないなら先生が帰ってもいいって。さくやの鞄持ってきたけどどうする?」
朱琉はベッドの縁に俺の鞄を置いた。
帰る…帰ろう…ここにいても、どこにいてもこの傷が癒えるところなんてないんだから。
俺は被っていた布団を剥ぐと起き上がった。
俺を見ていた明琉と目が合う。
明琉は満面の笑みを浮かべていた。
「随分、泣いてたみたいだね」
いつもの調子で遠慮なく無邪気に聞いてくる。
隠すのも諦めている俺も俺だけど、些か無遠慮すぎて思わず睨みつけた。
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