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いつもは愛らしい仔犬のような大きな瞳が今や黒く濁り、人を蔑んだ意地の悪い笑みを浮かべた朱琉の表情に背筋が凍る。
「あまりの醜さに人前に出せないと、離に閉じ込められていたあの頃に比べたら随分ましでしょう?…フフ」
俺の身体は金縛りにあったかのように動けない。
「美しく生んでやれなかった」
あの時、ホオデリが言っていた意味がようやくわかった。
俺は、醜さのあまり離に閉じ込められていたサクヤの姉、イワヒメ…
ハヤトに密かに想い焦がれながら離に幽閉されていた女…
壁代越しにハヤトとサクヤの情事を聞いては声を殺して泣いていた。
俺は、生まれ変わってもあの頃と変わらない…
サクヤじゃない俺に結月は決して振り向かない。
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