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人々が笑顔を絶やさず、活気に溢れた国を…
ホオデリの志しは常にそれだった。
元々があまり豊かではなく荒れていたこの土地に、畑や田んぼを作り農業を広め、酒米を開発し酒造の国を築いたのはホオデリだった。
しかし近年の夏の日照りや嵐で天災が続き、農作物はもちろん国の資金となる酒米の稲も多大な被害を受けていた。
国の情勢は悪くなるばかり。
ホオデリは頭を抱えていた。
そして、僅かな蓄えも底を尽きかけた時だった。
その話しが飛び込んできたのは。
その話しを聞いた時、ホオデリ自身もサクヤのように肩を震わせ怒りに爆発しそうになった。
我が子であり同じ男であるサクヤが、そのように扱われる事がどんなに人道に反するか…
幾ら国が豊かになろうとも、我が子がそのような扱いを受けるのは間違っている。
初めはホオデリもそう思っていた。
しかし、国の情勢はますます悪化するばかり。
ホオデリの働きも政策もまるで無力だった。
人々の間に不安が広がり、その不安はいつしか不満になり、不満は争いを生み、争いは戦に変わる…
それだけは…絶対に阻止しなくては…
ホオデリの中にあったサクヤと国を乗せた天秤は、国に傾いたのだった。
その苦渋の決断をサクヤに話した昨日から、サクヤの執拗な訴えは止まらず今に至っているのである。
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