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ホオデリは向けていた背中を返し、サクヤに向き直った。
「サクヤ、お前にはすまないと思っておる…父親としてお前を守れなかった。お前からは憎まれても恨まれても仕方ない…」
そう言うと、ホオデリはぐったりと項垂れた。
「しかしサクヤ…わしにはこうする他なかったのだ…」
俯き肩を落とした目の前の父を見てサクヤはこの老人は誰だろうと一瞬思ってしまった。
きっと、近頃眠れない日々が続いていたのだろう瞳は虚げで下瞼は落ち窪み、よく見ると青黒い。
自慢の髭には白髪が混ざり、櫛も暫く通していないようだった。
父も悩んで悩んで悩み抜いて決めた決断なのだ…
しかし、当事者である本人には仕方ないと諦める事ができなかった。
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