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目で見た。わあ……」
「わあって何よ」
エイトは、あたしの目の前まで顔を近づけてきた。近くで見るとますますイケメンである。彼の長いまつげがあたしの頬に触れそうになった。
「君もしかして…………生きてる?」
いよいよ失礼なやつである。
「生きてるよ」
「ってことになるよね。君、お母さんとお話してたもんね。でも、そんな、わけ……。いや、……こんなのはじめてだ。神様が、ミスを?」
目の前の彼は、あたしが生きているとわかった途端に顔を真っ青にした。さっきまでキス寸前の距離だったのに、なぜだか今は部屋の隅で小さく震えている。悪魔のようないでたちをした天使だとは到底思えない。一体どうしたというのだろう。神様だって、ミスくらいするだろうに。……いや、しないか。
「はじめてなんだ」
「え?」
彼がか細い声で呟く。あたしは、聞き取ることが出来ない。
「生きている人間と、会話するのはじめてなんだ」
やっとのことで、聞き取れたそれはあまりにも拍子抜けしてしまうもので、隅で小さく震えているのが怖がっていたからだと知った時には大きく笑った。
「馬鹿だなー、エイトは」
あたしは、そっくりそのまま彼に言われた言葉をお返しした。
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