第1章 エイト

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に男の子になることも絶対にありえないし、あたしに男兄弟はいない。ましてや、知らぬうちに彼氏ができていただなんて夢物語である。 あたしの知り合いに誰も思い当たらない男の子があたしの前に現れたのだ。 「誰?」 「だから天使だって」 「いや、誰?」 「天使。檜山美羽ちゃん……だよね?」 天使? そんなわけないじゃない。目の前の少年はおそらく同い年くらいに思われる見た目をしていた。黒髪に黒いスーツのような服を着ていて、天使というよりはどちらかというと悪魔だ。あ、あれか? さっき、空模様のこと悪魔みたいって言ったからか? 「天使だなんて、ふざけないで。ここ、個別の病室だから出ていってよ。誰かと間違えたんでしょう?」 ありえない。ありえない。 あたしにお客が来るなんてありえない。来るのは、お医者さんか、看護師さんか、お母さんくらいなんだから。 「間違いじゃないよ。だって、君、檜山美羽ちゃんでしょ?」 「……そうだけど」 「じゃあ、間違えてない。さ、僕と行こう」 「行こうって、どこへ」 「天国だよ。迎えに来たんだ」 ??!??!? ありえない。ありえない。こんな非現実なことってありえない!! 天使?
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