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タイミングというのはとても面白いものである。
「おはよ、美羽。母さんよ」
ドアを叩く音と共に母さんがやってきたのだ。
「や! や! や!!! 無理無理!! 部屋に男連れ込んでるとか絶対無理、!!! なに突っ立ってんのよ、隠れなさいよ!!」
「大丈夫だって」
「なにが大丈夫なのかわからないし!! 」
「いーから、いーから!」
「はぁあ?!?!」
「美羽?」
「あ、母さんおはよ!入って入って!」
あたしは慌てて、母さんに返事をした。母さんは「なかなか返事くれないからびっくりしたわよー」なんて言って、着替えなどを整理し始める。あたしの枕元にいる彼には目を向けもせずに。
「ほらね?」
もちろん、彼は誇らしげな笑顔である。
あたしは、なんだか負けたような気持ちになった。母さん。あたし、病室に男の子連れ込んでるんだよ?! なんか言ってよ!!
「母さん!!!」
「……ん?」
呑気な返事が返ってくる。
「こちら、お、……お友達のエイト君」
しばらくの間。
母さんが気づいてくれないなら、あたしから言うしかないよね。そうだよ、うん。そう!!!!
「……美羽? 何言ってるの? 」
「美羽ちゃん、馬鹿だなー」
確かに、馬鹿はあたしの方なのかもしれないとあたしはその時そう思った。
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