第1章 エイト

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タイミングというのはとても面白いものである。 「おはよ、美羽。母さんよ」 ドアを叩く音と共に母さんがやってきたのだ。 「や! や! や!!! 無理無理!! 部屋に男連れ込んでるとか絶対無理、!!! なに突っ立ってんのよ、隠れなさいよ!!」 「大丈夫だって」 「なにが大丈夫なのかわからないし!! 」 「いーから、いーから!」 「はぁあ?!?!」 「美羽?」 「あ、母さんおはよ!入って入って!」 あたしは慌てて、母さんに返事をした。母さんは「なかなか返事くれないからびっくりしたわよー」なんて言って、着替えなどを整理し始める。あたしの枕元にいる彼には目を向けもせずに。 「ほらね?」 もちろん、彼は誇らしげな笑顔である。 あたしは、なんだか負けたような気持ちになった。母さん。あたし、病室に男の子連れ込んでるんだよ?! なんか言ってよ!! 「母さん!!!」 「……ん?」 呑気な返事が返ってくる。 「こちら、お、……お友達のエイト君」 しばらくの間。 母さんが気づいてくれないなら、あたしから言うしかないよね。そうだよ、うん。そう!!!! 「……美羽? 何言ってるの? 」 「美羽ちゃん、馬鹿だなー」 確かに、馬鹿はあたしの方なのかもしれないとあたしはその時そう思った。
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