プロローグ

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遺書 拝啓 私の天使様 このような手紙を遺書と名付けるのは、少しばかり私も気が引けますが、何分私には文才がないです故にこのような形になってしまったこと、先にお詫び申し上げます。 冬の寒さが厳しい季節になりました。いかがお過ごしでしょうか。相変わらず、天国はお忙しいのでしょうね。神様はきちんとお仕事なさっていますか? あなたとお別れしてから、随分と時が経ちました。20歳まで生きられるかわからないと言われていた私も、予期せぬ未来を過ごすことが出来たのです。 あの頃の私は必死でした。今死んだら、あなたが迎えに来てくれるのではないかと、せっかく助けてもらった命を捨てようとしたこともありました。 ですが、今は違います。私は、生きています。結婚もして、子供も生まれました。最初は、あなたへの気持ちを紛らわすための恋愛でしたが、いつしかそれも本当の愛に変わり、あの長い入院生活で奪われた幸せが今、1度に私に訪れたように感じます。 生まれた子供には、"栄斗"と名付けました。ごめんなさい。本当のことを言ってしまうと、私は忘れかけていたのです。あなたと過ごした時間を。だって、無理もないでしょう? 本当に夢のよう
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