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「よし、願いは叶った。もう帰ってもいいぞ」
「ではまた……じゃなくて! まだ、丹一さんの本当の願いを叶えていません」
このタコ、深層意識の底まで読み取ろうとしているのか? やはり、危険すぎる。どうにか言い包めて、さっさと帰って貰おう。
「俺が欲しい物をくれるんだよな? じゃあ金を……いや、待て。お前は鐘を渡しそうだ。そうだな……歴史的に価値のある物をくれ。高く売れる様な、誰もが知ってる有名な物だぞ」
「えっ? 誰もが知ってる有名な物? 分かりました。では、これを……」
タコはそう言うと、のりたまこふりかけを差し出した。しかも、開封済みだ。
「あの有名な、快〇瑠さんが友人に食べさせられかけた、虫の湧いたふりかけです。知名度抜群で、この祭りに相応しい宝と言えましょう」
「いらんわ! そんな物を見たら、飯が食べられなくなるだろ!」
神はショボンとした。
「もういいよ。これは捨てとくから、さっさと帰りな」
さらに神はショボンとした。
「昨年の事です。娘が七夕の短冊に願い事を書いていました。パパも書いてよと言われたので、家に飾るならと、ふざけて『ラスベガスで一発当てて、一生遊んで暮らしたい』と書きました。そして一週間後。保育園で、娘の可愛らしい『お姫様になりたい』という願いの横に、私の下衆な願いが飾られていました。実名も入っています。晒し者ですよ。笑って下さい。あははははは……」
「あはははは……笑えねえよ! 何の話だよ!? 誕生日なのに気持ちが暗くなったじゃないか。お前、神なんだろ? だったら、自分の為に力を使えよ!」
「自分には使えないのです。皆さんを幸せにする能力なので……」
「……そうなのか? すまなかった。その気持ちだけで十分だ」
これ以上、関わり合うのは危険だ。同情したフリを見せて、お帰り願おう。
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