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クラッドは正体がバレたと今度こそ拳銃を握り、人差し指を引けば。
―――キンッ
彼女に届く前にその弾がはじかれる。
それはトキオリが抜いた刀に当たったからだ。
『あ、あのっ』
トキオリはまるで彩を守るように彼女の前に立ち、クラッドに背を向けつつも刀と顔は彼を鋭い眼差しで威嚇していた。
『大丈夫か』
『あっ、はいっ、その、ありがとうございます』
ペコリと頭を下げる彩。
『それで、あの、貴方たちは〝赤い死神〟なんですよね?』
『そういうことになるな』
『・・・綺麗』
彩は手を伸ばし、トキオリの頬にそっと触れる。だがすぐにまるで電流にでも触ったかのように手を離し、『勝手にごめんなさいっ』と謝った。
『あの、貴方は?』
けれど怖がっている様子なんてどこにもなく、むしろ・・・――――
『俺は、』
これはまるで運命だったのだというように、
『ブラックのトキオリだ』
二人は惹かれあっていた。
「ようするに、一目惚れ、だったんだ」
「・・・この赤い瞳を綺麗とか」
どこか自嘲するようにセツナが笑えば「だよなぁ」とクラッドも複雑そうに笑う。
「だがな、彩はその赤い瞳が綺麗だと言って、一番のお気に入りだった」
「・・・・」
コーヒーの中に映る自分の姿を見て、セツナはため息をつきクラッドに視線を戻す。
「その後、二人は?」
「あの空き家で会うようになって、しばらく経った後、お前が生まれた」
「反対しなかったのか」
「したさ。彩にも生むなと拳銃を突きつけたこともある。だがな、」
『この子は私とあの人の子です』
たとえブラックとして生まれても、ホワイトとして生まれても、
『私はこの子を愛しぬくし、あの人のことも愛しぬく』
ブラックは命を簡単に奪うと聞いていたけれど、
『殺し合いをするブラックが滅びないのはなぜ?愛し合うことを知っているから』
そしてブラックは。
『命の輝きを知っているからこそ、奪い合いたいと思うのよ』
「強い母親の前じゃ、拳銃なんかただのガラクタだ」
苦笑するクラッドだが、どこか嬉しそうな顔にも見えて、決して彩のことが嫌いではなかったことが窺えた。
「そして父親の前でもな」
だがそこで苦虫を潰したかのような顔をするのだから、トキオリには本当に苦い思いをしたのだろう。
「お前が生まれた時、二人はとても喜んだ。お前が赤い瞳を持っていてもな」
「・・・・」
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