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「赤い瞳である以上、彩が育てることは出来なかったから、子育ては俺とトキオリでした」
「アザミは?」
「その時はまだ教えてなかったからな、セツナが生まれたことは」
「すぐにバレるだろ」
「あぁ、ホワイトと一緒になったことはすぐにバレて、トキオリとアザミは大ゲンカした。そこで二人は友達の縁を切ったんだ」
でもな、とクラッドは続ける。
「二人が死んだ後、アザミがお前を引き取った」
トキオリと彩、そしてセツナの家族三人が会う場所はあの空き家だった。
その日もいつもと変わらず三人で会っていた―――いた筈だった。
『トキオリ、彩』
そろそろ時間になる。
そう言いながら扉を開けると、そこは血の海だった。
『・・・は?』
倒れているのはトキオリと彩で。
そしてその血の海の真ん中に立っているのは、
『アザ、ミ?』
セツナを片手で抱くアザミだった。
汚れていない長い刀は月明かりによって輝き、空き家だと思わせておくために電気ではなくロウソクの火を使っていたそれは、跳ねた血飛沫により消えていた。
『どういう、ことだ・・・何が、あった』
クラッドは勝手に震える声と身体を押さえることも出来ず、立つアザミに問い掛ければ、アザミは刀を出したまま『この子は私が育てる』と言う。今どのような表情をしているかは分からないが、その声はいつもと同じもののように思えた。
『お前が、殺した、わけじゃない、よな?』
『・・・どうだろう』
『どうだろうって、どういうこと、だ?』
震える身体を叱咤して拳銃を掴もうとするが、本能がそれは違うと叫ぶ。
だが相手はアザミだ、一秒でも遅れを取ったらこちらが〝落ちる〟だろう―――いや、なんだその考えは。まるで、まるでアザミが二人を殺したかのような、そんな。
『私の、管理不足のせいだ』
そんなこと、あるわけが。
『私の責任だ』
アザミは振り返る。
そこで初めて見えた彼の表情は〝無〟としか言いようがない。
何を思っているのか、何を感じているのか、または何も思っていない、感じていないのかもしれない。
それほどまでに彼は無表情だった。
『・・・・』
濡れた足音を響かせながら、下層階へと戻って行く彼を止めることなど出来なくて。
出来ることといえば、クラッドはただ、死した友人らのことを想って、涙を流すことしか出来なかった。
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