0ページ目 狐箱

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「ねぇ…帰ろうよ」 綾音は後悔していた。いや、後悔しない日がないと言ったほうがいい。それほどまでに彼女は友人に振り回されていた。 「はぁ?お前ここまで来て何言ってんだよ」 綾音の弱音に、幼馴染の康太がめんどくさそうに振り向きながら愚痴を溢した。 「だって…やっぱりいけないことだよ…」 康太の言葉によろけながら、弱弱しく綾音は反論した。 時刻は深夜1時頃。小学生ならとっくにベッドで寝ている時間だが、綾音達は図書室のドアの前にいた。 「お前さぁ」 康太がだるそうに答える。 「いつもいつもやる直前に怖気づくのやめろよな」 「え…」 予想外な言葉がきたことに綾音は対応できなかった。 「まぁまぁ綾音っちがビビりなのは今に始まったことじゃないしー」 カチャカチャと針金で鍵穴をいじりながら稔がフォローをいれる。 「それはそうだけどよー」 不満げに康太は続ける。 「だったら最初から断れよなーOKしてから後でやっぱりダメとか言うのまじで萎えるわ」 「こ…」 断ったじゃんと言いたい気持ちをふみとどめ、罪悪感にも似た感情を覚えた綾音は俯いた。
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