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圭二に初めて出会った時、彼はまだ赤ん坊だった。
『かわいいよね、修吾。圭二君って言うんだよ』
そう言って微笑んだ父は、ベッドですやすやと眠る圭二の頭を撫でた。
そんな父を横目に、修吾はおそるおそる、ベッドの周りの柵の間から覗き込むことしかできなかった。
出会った当時、既に圭二達の傍に母親はいなかった。
生まれたばかりの圭二と、圭二の二歳違いの姉・桜(さくら)を置いて、出て行ったのだと、ずいぶん後になって父から聞いた。
一方、修吾の両親も離婚したばかりだった。
何故両親が離婚したのか、その理由は、今も聞いてはいない。
ただ。
修吾の覚えている母は、いつもイライラしていた。
のんびりと、おっとりとした父に。
その気質を、受け継いだ自分に。
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