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そして、その分、彼女にそっくりの兄を、溺愛していた。
だから、離婚する時も、母は兄だけを連れて行くことを選んだのだ。
修吾自身、母や兄と別れるのはもちろん哀しかったが、それ以上に、父と二人きりで暮らせることに安心していた。
母は母であり、兄は兄であったが、あまりにも、彼らと自分は違いすぎたのだ。
『かわいいね、修吾』
再び、父はそう言った。幸福そうに、微笑みながら。
『この子も、お母さんいないの? 』
そんな父を見上げながら、修吾がそう聞くと、父は頷いた。
『そうだよ、修吾と同じだ』
そうして、修吾を抱き上げ、ベッドの上から赤ん坊を覗き込ませる。
『でも、修吾の方がお兄ちゃんだからね、桜ちゃんと圭二君の面倒みるの、手伝っておくれ』
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