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 今時期は襟付きのシャツでも周囲から浮いたりしないが、これから夏に向けて周りはどんどん薄着になっていく。  学生の時は、『制服』というオメガにとっての最高の防護服があったが、大学だとそうもいかない。  大学に入って驚いたのだが、誰彼もプロテクターをしていないのだ。  そもそも大学に進学するオメガは極端に少ない。もしかしたら、故意にプロテクターをしていないオメガもいるかもしれないが、それにしても、ここにはオメガが少ないんだと、体格の良い在学生の中に混じる自分の異質さをあらためて思い知った。  そう思っていた矢先。  移動教室の際にオメガとすれ違った。なぜオメガとわかったかというと、噛み痕を堂々と露出していていたからだ。  晴れ晴れとした表情を浮かべている彼を目の当たりにして、礼一はおもわず目をそらしてしまった。  きっと彼はオメガであることを受容し、そしてつがいを持っていることを幸福に感じているのだろう。  所有を示すような痕を刻まれてなお、本来の意味をなさないプロテクターを未練がましく嵌めている礼一には、あのように見せつけて歩くなど、到底できそうもない。     
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