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 明久はここ最近になってやっと自分の部屋で一人で寝られるようになったものの、起きている間は近くに居たがるところは変わっていない。礼一が勉強中は遠慮しているようだが、それ以外の時はたいてい近くにいた。それこそ普段手に取らない本まで持ち出してまで、礼一のそばにきたがる。  友達のように遊び相手になるわけでもなく、特別構ってやるわけでもない。もちろん話しかけられれば会話はするが、日頃から言葉数が少ない礼一から話を振ることはほとんどない。面白くないだろうに、一緒にいるのがそんなに良いのだろうか。  そこまで考えて、一つの解にたどり着く。 「明久、父さんと母さんがいなくて寂しい?」  手にしていた本を近くのカフェテーブルに置くと、明久の方に居直り問いかけた。  幼い頃から寂しがりやで、一人でいることを嫌がる子だった。大きくなったとはいえ、まだ十を数えたばかりだ。仕事で不在がちの両親がいなくて、不安なのだろうかと思い尋ねてみる。 「え? うーん、さみしいかなって思う時もあるけど……」  考え込むような仕草をしてみせてから、 「礼兄がいるから大丈夫。礼兄がいれば、さみしくないよ」  と、また嬉しそうにはにかむ。それは照れ笑いにも似ていた。すこし赤みを帯びた頬にえくぼを浮かばせ、礼一を一心に見つめてくる。  この感じ、覚えがあるような気がした。  そして一瞬、女子生徒の恥ずかしがった顔がよぎり、明久のそれと重なった。 (……まさか)     
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