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 母が気に入りの店でテイクアウトしてきた昼食を一緒に食べているあいだ、母のおしゃべれは止まらなかった。息を弾ませて楽しそうに話す姿に、礼一は帰ってきてよかったと安堵の胸を撫でおろした。  母の熱烈な歓迎から解放されたのは夕刻にさしかかった頃だった。  プロテクターを嵌め、いつも通りを装いながらも、内心母に勘づかれてしまわないかハラハラしていたが、とりあえず危惧していた事態は免れた。  自室に戻り一人になると、ふう、と息が漏れた。昨日から色々ありすぎたせいだろう。  机に座し、肩の力を抜いた時、下腹部がーー熱くて太い杭を飲み込んでいた部分が疼いた。  昨日まで誰も触れたことのない秘められていたそこは、とても過敏になっていて、少し気を緩めると今でも飲み込んでいるかのような異物感がある。爛れたように熱をもち、内部にいつまでも残存するみだりな感覚は、昨日の情事を否応にも思い出させ、礼一を辱めた。  礼一は、邪念を振り払うようにかぶりを振ると、読みかけだった専門書を広げた。それはマーケティングの本で、実際の企業を題材にさまざな事例を交えて、解説がされている。  礼一はこの春、私立の商学部に入学を果たした。  商学部を選んだのは、父のように活躍したい、と考えているからだ。  しかしいきなり思い描いているような展開になるとは思っていない。     
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