子飼いの噛み痕

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　気象庁から桜の開花予測が発表されたのは、昨日のこと。このあたりも来週には咲き頃らしいが、本当に咲くのだろうかと疑ってしまうくらいには寒さが身にしみる日々が続いている。
　図書館から一歩外に踏み出すと、吹き込んできた風に頬を撫でられ、礼一はぶるっと震えた。反射的に身が縮む。紺色のコートの襟ぐりを掻き合わせると、足早に帰路につく。
　ようやく日が長くなってきたとはいえ、夕方も近くなるとあたりは薄暗くなり、うららかな陽気が信じられないくらいぐっと気温は低くなる。
（手袋してくればよかった……）
　さっきまで暖房に甘やかされていた体には、冬の再来かと思うほどの寒さは堪える。施設を出たときは暖かかったので、油断していた。さっそく手がかじかんできて、冷気から逃れるようにポケットに手を突っ込んだ。