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ある日の昼下がり、雨が降っているのにも関わらず傘もささずに雨に打たれ公園のベンチに座っている男.....キムジェジュン。
彼は数日前全てを失った。
ある日出勤すれば突然会社は倒産したと聞かされ。あれよあれよと言う間に職を失い、早くに他界した両親が知人の借金を肩代わりしていたので両親の代わりに少しずつではあったが返済していた借金も払えなくなり。住む家は差し押さえ。職も家も失くした彼は先程の通り早くに両親を亡くしているので行く宛は全くないのだ。
途方に暮れた彼はここ数日この公園のベンチに座ったまま時間を潰していた。
こんな絵に書いたような不幸が一気に降り掛かってくるものだろうか...
ジェジュンはたった数十年の自分の人生で起こった不幸にただただため息をつくしかなかった。
「これからどうすればいいんだろ...」
ここ数日何度呟いたか分からない言葉を空に向かって白い息と共に吐き出した。
目の前に広がる空は自分の心と同じように灰色に澱んで分厚い雲に覆われていた。どんどん激しさを増してくる雨を遮るものは何も無く、そのままジェジュンの身体を打ち付ける。そんなジェジュンの視界に空ではなく、別のものが入り込んできた。物...というより人だ。
「あの、傘...ささないと風邪引いちゃいますよ?」
その人物は少し遠慮がちにジェジュンに声をかけてきた。パッとそちらに目を向けるとそこにはキリッとした眉毛にシュッとした輪郭と目。とても顔が小さく、でも身長はジェジュンよりもずっと高い...1人の青年が立っていた。
「あぁ、そうだね...。でも君の方こそそんな事してたら風邪引いちゃうよ」
ジェジュンが濡れないように傘に入れているから彼の後ろ半分は雨にうたれて服の色が変わり始めていた。
「じゃー、こうすればお互い濡れませんね」
そう言って彼は柔らかく笑ってジェジュンの隣へ腰をおろした。
「いつもここにいるんですか?」
「へ?」
「いや...えっと、ここ数日貴方がここに座っているのを見かけてたから...」
いつもこの時間帯にここに来てるのかなって...そう頭をポリポリかきながら言う彼。ほんの少しだけ顔が赤くなっているが、ジェジュンはそんな彼の様子に気づくわけでもなく。彼の質問にどう応えようか考えるのに必死だった。
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