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僕の住む円名地区は、わりと地域の祭りが盛んだ。
秋には御輿や屋台も出て、活発に盛り上がっている。
だからどこの神社もそれなりにつながりがあるけれど、この名前の神社は聞いたことがない。
通学路にあるから、名前だけは知っていたけれど……まるで、仲間外れにされているかのようにぽつんと建っていた。
普段は通り過ぎるだけの場所だったけれど、雨の魔力だろうか。
真っ赤に輝く鳥居が、とても魅力的に見えてしまったのだ。
まあ、魅力的に見えたのは「屋根がある場所」という意味合いの方が強いかもしれない。
できるだけ丁寧にカメラを拭いて、動作確認をする。
うん、まあ、大丈夫。
……たぶん。
早く雨がやまないかなぁ、と考えながら雨粒を眺めていたけれど、飽きてきた。
退屈だ。
退屈はヒトを殺すというけれど、実際その通りなのだろう。
「……ォー……」
「え?」
とりとめなくそんなことを考えていたら、背後から何かの音が聞こえた。
僕は今、賽銭箱の隣にいる。
後ろは本殿だけど、堅く扉は閉ざされていたはずだ。
振り返ってもそれは変わらない。
だけど、時間が経つほどに何かの声はハッキリと耳に届くようになった。
……どうしよう。
なにか、だれか、いるんだろうか。
不審者なら逃げないといけないし、でも、もしも助けを求める声だったらどうしよう。
見捨てるなんてできない。
「……あのっ!」
思い切って声をかけてみる。
「だ、誰かいるんですか……?」
「………」
僕が声をかけた途端に声はとまった。
扉には南京錠が巻き付いていたから、僕はせめて扉をノックしようと手の甲を向けたところで……。
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