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2)神社、モフモフ
「全く。オオカミさまは、ご自身の立場をもっとわきまえて下さい」
「すまないなぁ、遊馬。つい……」
頭上で誰かが話している声が聞こえる。
片方はなにやら怒っているようで、もう片方はシュンとしている。
誰だろう。
目を開けて確認してみようと思ったけれど、耐え難く瞼が重い。
どうやら、布団の上に寝かされているのだということだけは背中の感覚で分かった。
「まぁ、オオカミさまの突飛な行動は今に始まったことじゃないから、別に構いませんけどね。それで、いきなりどうしたんですか?」
「それが自分でも、どうもわからんのだ。いつものように眠っていたら、どこか懐かしい匂いがして、それで……」
「オオカミさまが犬みたいになる姿は、久しぶりに見ましたよ」
「犬と一緒にしてくれるな」
「はいはい、オオカミさま。……ところで、この子どうしましょうか」
「雨宿りにきたんだろう。雨がやんだら帰せば良い」
「ですが……オオカミさまの姿をおもっきり見られていますよ?」
「それなら、少し忘れてもらうだけだ」
忘れてもらう……?
そんなことが、簡単にできるのだろうか。
ボンヤリとした頭では理解が遅れたけれど、どうやら話をしているのは御丘見神社の神主らしきお兄さんと、僕に飛びかかった大きな獣らしい。
……ん?
大きな、獣……?
「そう簡単にいきますか?」
「私はコレでも神様だからな。造作もない」
「……神様の力は、信仰ありきでしょう。オオカミさまにそんな力が残っているとは思えませんが」
「……うるさいぞ。私にも、ヒト一人ぐらいの記憶なぞどうにでもなる。そもそも、私に力があればそもそも遊馬と手を組んでいないだろう。縁もゆかりも、ないんだから」
「縁ぐらいは、あるんじゃないですか? お互い、この国に生きる存在という……」
「くくりが大きすぎるぞ」
どうして、獣が……喋っているんだ?
「……あ、起きたみたいですね」
ハッキリとした疑問が頭に浮かんだ時点で、ようやく瞼に力が入った。
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