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「はぁ……仕方がないな」
オオカミさま、と呼ばれているコスプレ男はため息をついてガッシリと僕の肩を掴んだ。
「えっ!?」
「本当は、不本意なんだがな……」
無理矢理に真っ正面から向き合う形になる。
男は整った顔立ちをしていたけれど、なぜか眼に光がなかった。
そのせいで、少年のようにも老人のようにも見える。
「えっ、そうなんですか? それなら、なんであんな不用意に姿を見せたりしたんです?」
「普段はそんなことしないだろう!」
「そうでしたっけ……」
「遊馬は黙っていろ」
コスプレ男は僕の顎に手をかけた。
見つめられて、伏し目がちだった僕の視線が彼と強制的にぶつかる。
「……ん?」
まるでキスでもするときのような距離感まで顔が近付く。
「お前、まさか。名前は……?」
「えっ? 名前?」
「ダメですよ、オオカミさま。まずは自分から名乗らないと。ごめんなさい、ええと……彼はオオカミさま。いきなりのことで驚いていると思うけど、これでもここの神様なんです。決して酔狂なコスプレ男なんかじゃないから、安心して下さいね。彼の身元は、自分が保証します」
「おい、その言い方だと遊馬が私の保護者みたいじゃないか」
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