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「まあ、いいでしょう? そんな細かいことは。それで……お名前、教えてもらえますか?」
「あ、えっと……」
いや、でも……。
そう簡単に、ハイそうですかと可視化した神様を信じることなんてできるだろうか。
首を縦に振りかねている僕を見かねて、オオカミさまと紹介された男は片手で僕の目を隠す。
「わっ」
「信じろとは言わないが、自分の目で見たものぐらいは否定するな」
目隠しをはずすと、目の前にはさっき僕を襲った、大きな白い獣がいた。
それは、さっきまで話していたオオカミサさまと同じ声色で話す。
「どうだ!」
フフン、と自慢げに鼻を鳴らすけれど正直ついていけない。
「どうだ、って言われても分からないですよ。オオカミさま」
「あの……」
「なんだ?」
「オオカミさまって、やっぱり狼……なんですか?」
「そうだ! 犬と見間違わないあたり、お前はなかなか見所があるな!」
そりゃ、さんざん「おおかみ」という言葉が散りばめられていたらそうなるだろう。
第一印象で犬と思ったのは内緒だ。
「うんうん、やっぱりそうだ。間違いない。私の眼に、狂いはなかった」
自分の身に何がおこっているのかよく分かっていない僕を置き去りに、オオカミさまは一人で勝手に驚いた顔をした後で深く頷いた。
「お前がここにいるということは」
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