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「はい、終わり。次ね」
そうして補助石すべてを同じ値にしてから、ミナはカィンに言った。
「今回は一度に組み直したけど、明日はひとつずつ組み直してみよう。きっと両方必要になるから」
「分かった」
答えるカィンに頷いて返し、ミナはルークを見た。
「行きましょう」
「うん」
こうして一行は馬車や馬に乗り、次は楔を目指した。
こちらは、要石も補助石も異常はないのだが、補助石の残量が少ないので、これを換える。
換えの補助石はすでに届いており、ルークは残量の少ない補助石を外して、交換した。
新たな補助石はすべて、ミナが判定したものなので、問題はない。
念のためミナが確かめたが、正しい値で要石を補助していた。
「完璧です。じゃあ、帰りましょうか」
ミナの言葉で一行は馬車や馬に乗り、宿に戻る。
馬車のなかで、ルークは色々と話し合った方法を試し、馬車から降りても、どこか試すところはないかと、宿での警護準備をしていたスーに聞いて、裏庭から続く空地へと向かった。
ミナとカィンも荷物をパリスや宿の荷持ちに預けて、ルークのあとを追う。
ルークは、色々と書き付けた帳面を持って、まず、馬車のなかでできなかった、地面を使って伝達する方法を試すことにした。
「土よ通せ、その者、ミナ・ハイデル。現せ、実験成功。我、ルシェルト・クィン・レグナの名の元に、土文字」
すると、ミナに向かって、片手で覆える程度の土がぼこぼこと盛り上がり、ミナの足元に到達すると、その地面に、大きく、実験成功、という字を形作った。
「やった!成功だねっ?」
跳び上がるルークに、悪いなと思いながら、ミナは、うーん、と音を発した。
「成功と言えなくもないですけど、これ、ちゃんと力を制御していれば、私のところに着くまでの地面は、何も起こらないものなんです」
ミナは術語を使わず、ルークの足元に、親指と人差し指でつまめる程度、土を盛り上げて、こんな感じです、と書いた。
そこに至る地面には、なんの跡もない。
「ルークは力が強いから、こんなになっちゃうんでしょうね。力の入れ過ぎです」
ルークは、ああー、と呟いて、肩を落としてしまった。
カィンが言った。
「でも、すぐできるようなら、訓練にならないかも。これを訓練にするならですけど」
ミナは頷く。
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