巡行開始

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「ちょっと弱い言葉だね。言い切りたいというか…」 「手紙、とか?」 カィンも首を(ひね)りながら言う。 ミナが、はたと手を打った。 「何を伝えるか、と考えてみては?気持ち、状況、願い事」 ルークは、うーんと(うな)る。 「それだとその時々で変わらない?」 「そっかあ…じゃ、土文字」 「うーん、そんなところかなあ」 いまひとつ思い切れないらしいルークに、カィンが言った。 「土文字なら、どんな形でそこに現れるか、容易に想像できます。基準とするなら、判りやすいものがいいのでは?」 そう言われて、ルークは納得したように頷いた。 「そうだね。じゃあ土文字にしよう」 ルークはそれを帳面に書き、顔を上げた。 「誘導は、どんな風に考えたらいい?」 ミナは少し考えて、言った。 「最初は文字じゃなくって、図形とかにしてみたらどうでしょう。そうだ。これなんてどうです?離れたところに円を()く、一重(いちじゅう)二重(にじゅう)三重(さんじゅう)四重(しじゅう)、一番多く円を見付けたひとの勝ち」 ルークは表情を明るくした。 「遊びだ!どんな風に遊ぶのっ」 「そうですね、まず三竦(さんすく)みで負けたひとが、ある地点に立って、草の陰とか、見付けにくいところに、一重から、遊んでいる人数分重なる円を(えが)きます。そのなかで、一番円の多い印を見付けたひとの勝ちで、一番少ない人は、また新しい円を(えが)くんです。まあ、楽しいかは謎です…もうちょっと何か付け加えるといいかも」 言ってから、付け加える。 「あっ、そうだ、一番多い円を見付けられずに降参させたら、円を描いたひとの勝ち」 「うんうん!」 頷いて、ルークは帳面に書いていく。 ミナは、それを見ながら言った。 「でもこれ、誘導じゃないですねえ…。ん、こんなのはどうでしょう。土の上に立つものを探るんです。自分の足元から円が広がる。波紋のように広がっていく。円の波が広がっていく。それを邪魔するもの。動くもの。動かないものって感じで、力で遠方を認識する訓練です」 「うーん、実感湧かないけど、それこそやってみないと判らないね。書いとく!」 そうこうしているうちに、馬車は休憩場所に着いた。 ここで一旦、馬車を降り、腰を伸ばす。 現在地は、すでに国の南端である王都レグノリア区を抜け、北隣のユーカリノ区に来ていた。
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