10人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと弱い言葉だね。言い切りたいというか…」
「手紙、とか?」
カィンも首を捻りながら言う。
ミナが、はたと手を打った。
「何を伝えるか、と考えてみては?気持ち、状況、願い事」
ルークは、うーんと唸る。
「それだとその時々で変わらない?」
「そっかあ…じゃ、土文字」
「うーん、そんなところかなあ」
いまひとつ思い切れないらしいルークに、カィンが言った。
「土文字なら、どんな形でそこに現れるか、容易に想像できます。基準とするなら、判りやすいものがいいのでは?」
そう言われて、ルークは納得したように頷いた。
「そうだね。じゃあ土文字にしよう」
ルークはそれを帳面に書き、顔を上げた。
「誘導は、どんな風に考えたらいい?」
ミナは少し考えて、言った。
「最初は文字じゃなくって、図形とかにしてみたらどうでしょう。そうだ。これなんてどうです?離れたところに円を描く、一重、二重、三重、四重、一番多く円を見付けたひとの勝ち」
ルークは表情を明るくした。
「遊びだ!どんな風に遊ぶのっ」
「そうですね、まず三竦みで負けたひとが、ある地点に立って、草の陰とか、見付けにくいところに、一重から、遊んでいる人数分重なる円を描きます。そのなかで、一番円の多い印を見付けたひとの勝ちで、一番少ない人は、また新しい円を描くんです。まあ、楽しいかは謎です…もうちょっと何か付け加えるといいかも」
言ってから、付け加える。
「あっ、そうだ、一番多い円を見付けられずに降参させたら、円を描いたひとの勝ち」
「うんうん!」
頷いて、ルークは帳面に書いていく。
ミナは、それを見ながら言った。
「でもこれ、誘導じゃないですねえ…。ん、こんなのはどうでしょう。土の上に立つものを探るんです。自分の足元から円が広がる。波紋のように広がっていく。円の波が広がっていく。それを邪魔するもの。動くもの。動かないものって感じで、力で遠方を認識する訓練です」
「うーん、実感湧かないけど、それこそやってみないと判らないね。書いとく!」
そうこうしているうちに、馬車は休憩場所に着いた。
ここで一旦、馬車を降り、腰を伸ばす。
現在地は、すでに国の南端である王都レグノリア区を抜け、北隣のユーカリノ区に来ていた。
最初のコメントを投稿しよう!