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国を東西に分断するチュウリ川を見ながら、ルークは背中を伸ばした。
桟橋にはそれほど大きくない船があり、客を10人ほど乗せているところだ。
その桟橋の向こうには、東からチュウリ川に注ぎ込む川があり、どちらの川沿いにも店が並んでいた。
「ルーク、何か飲みませんか」
カィンに促されて、ルークはその川沿いの店の1軒に入った。
店内は全体的に黒っぽい印象で、それはどうやら、柱や、上部の壁が黒いためであるらしかった。
「僕ここ、初めて来た」
店内を見回しながらルークが言い、ミナが献立表を見ながら応えた。
「私は2回目です。前の巡視のときサリと来ました」
「ふうん、何がおいしいんだろ?いや、やっぱり飲み物だけにしとく」
ルークはそう言って、ミナとともに葉茶を頼み、カィンとデュッカは豆茶を頼んだ。
この茶屋のなかには、彼らのほかに、イルマとセラムとパリスと、祭王親衛隊のルートヴィイ・リヒト…ヴィと、カイザック・ドュード…ザックがいた。
「ああ、それにしても、ミナの頭のなかには何が入ってるの?次から次へと術語とかが出てくる…」
「4種持ちだからですかね…いや、力量が小さいからですね」
ミナは、一般の者が1000~100000カロン持つ異能の力量を、100カロン未満しか持たないのだ。
「まあでも、だからそれが正しいってことはないですから、実践する前によく相談されてください」
「相談…ユラ-カグナに?」
ちょっと気が引けるかな、と思うルークに、ミナが言った。
「それでもいいですけど…新たに部署を立ち上げるんですよね。そこに配属される人たちと考えられてみては?」
ルークは一瞬、何を言われているか判らないような顔をしたが、やがて一気に笑顔になった。
「うん!考えてみるよ!」
ミナはルークが生き生きとしているのを見て、嬉しかった。
親衛隊のヴィとザックは、その様子を意外そうに見る。
あんなに感情を露わにしているところなんて、見たことがない…と思う。
だがそれは、いい変化であるように、思えた。
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