巡行開始

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       ―修築開始―    再び馬車に乗って2時間。 12時近くに、一行は今夜から3泊する宿に着いた。 食事を摂ってから、スーと、親衛隊の10人を置いて、ミナたちはまず、(いしずえ)のある場所へと向かった。 礎とは、今回カィンが担当する、壁状結界の要となる彩石…サイセキだ。 国内の各地点には、結界を構成する要石(かなめいし)を中心に、補助石を配置してある。 その補助石の使用量が、一定の値ではないため、これを改めること。 要石と補助石という2種の結界石のうち、残量が少ないものを取り換えること。 このふたつが旅の目的だ。 これは、ルークが維持する絶縁結界の(くさび)も同じだ。 楔も礎も、呼び方と役割と支えている結界の種類は違うが、結界石のひとつだ。 1時間ほどすると、礎の場所に着き、馬車のなかの者たちは外に出た。 ここにある礎の問題は、補助石の使用量が同じでないこと。 それは、要石を支える力が同じではないということだ。 支える力が多い部分は、傷付き、倒れやすくなる。 このままだと、中央の要石は、負荷を軽減するはずの補助石から、余計な負荷を与えられることになるのだ。 それを正す。 「じゃあ、一旦補助石を全部外してみて」 ミナに言われて、カィンは頷き、純粋な土の力を持つサイセキである黒土石の補助石を、すべて一旦結界から外した。 「じゃあ、補助石を組み直すよ。術語を発して」 カィンはもう一度頷き、補助石のひとつに触れた。 ミナはその手の上に、手袋をした手を乗せる。 「要を補い、助けよ。アルシュファイドの安泰を願う」 その言葉と同時に補助石へとカィンの力が注がれ、ミナはその力を使って補助石を繋ぎ、個々の補助石が発する力を同じにした。 「あとちょっと…はい、終わり。お疲れさま」 それからミナは、パリスを呼んだ。 「念のため余分な力を取っておきたいの。お願い」 ミナの言葉に、パリスはにっこり笑って答えた。 「喜んで」 そうして、彩石袋のなかからミナが選んだ彩石…透虹石(とうこうせき)という名のサイセキを持って、補助石の元へ行く。 「まずはこれ。誘導する。吸い取って」 その言葉に従って、パリスは補助石の余分な力を吸い取り、透虹石のなかに押し込めた。 透虹石とは、他の彩石や人から、力を吸い取る珍しいサイセキで、パリスは、このサイセキと同じ能力を持っているのだ。
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