10人が本棚に入れています
本棚に追加
―修築開始―
再び馬車に乗って2時間。
12時近くに、一行は今夜から3泊する宿に着いた。
食事を摂ってから、スーと、親衛隊の10人を置いて、ミナたちはまず、礎のある場所へと向かった。
礎とは、今回カィンが担当する、壁状結界の要となる彩石…サイセキだ。
国内の各地点には、結界を構成する要石を中心に、補助石を配置してある。
その補助石の使用量が、一定の値ではないため、これを改めること。
要石と補助石という2種の結界石のうち、残量が少ないものを取り換えること。
このふたつが旅の目的だ。
これは、ルークが維持する絶縁結界の楔も同じだ。
楔も礎も、呼び方と役割と支えている結界の種類は違うが、結界石のひとつだ。
1時間ほどすると、礎の場所に着き、馬車のなかの者たちは外に出た。
ここにある礎の問題は、補助石の使用量が同じでないこと。
それは、要石を支える力が同じではないということだ。
支える力が多い部分は、傷付き、倒れやすくなる。
このままだと、中央の要石は、負荷を軽減するはずの補助石から、余計な負荷を与えられることになるのだ。
それを正す。
「じゃあ、一旦補助石を全部外してみて」
ミナに言われて、カィンは頷き、純粋な土の力を持つサイセキである黒土石の補助石を、すべて一旦結界から外した。
「じゃあ、補助石を組み直すよ。術語を発して」
カィンはもう一度頷き、補助石のひとつに触れた。
ミナはその手の上に、手袋をした手を乗せる。
「要を補い、助けよ。アルシュファイドの安泰を願う」
その言葉と同時に補助石へとカィンの力が注がれ、ミナはその力を使って補助石を繋ぎ、個々の補助石が発する力を同じにした。
「あとちょっと…はい、終わり。お疲れさま」
それからミナは、パリスを呼んだ。
「念のため余分な力を取っておきたいの。お願い」
ミナの言葉に、パリスはにっこり笑って答えた。
「喜んで」
そうして、彩石袋のなかからミナが選んだ彩石…透虹石(とうこうせき)という名のサイセキを持って、補助石の元へ行く。
「まずはこれ。誘導する。吸い取って」
その言葉に従って、パリスは補助石の余分な力を吸い取り、透虹石のなかに押し込めた。
透虹石とは、他の彩石や人から、力を吸い取る珍しいサイセキで、パリスは、このサイセキと同じ能力を持っているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!