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ミナが言って、ルークたち3人は、ムトの許へと行った。
その足元を見ると、親指と人差し指でつまめるぐらいの太さの、きちんと読める文字が、適当な大きさで、盛り上がっていた。
「うん、成功です。次は文字を増やしてみましょう。デュッカのところに、上手に書けてる?片手を上げて。実験成功」
ルークは今度は、先ほど自分たちがいたところに佇むデュッカの、大きな風の気配を捉えて、文字を書いた。
すると、デュッカは片手を上げて、横に振った。
「なんだろう?」
近付いてその足元を見ると、実験成功の文字が、文字のなかの隙間がなく、潰れていて、読めないのだった。
「集中が保てなくなったのかもしれませんね。画数の多い文字ですし。どうです?」
「うーん、確かに、途中から疲れたというか、集中している感覚がぼやけてた」
ミナは頷いた。
「それなら、文字数を増やすことで、力を制御する訓練になるかもしれません」
「あっ、そうか。そうなるか」
「はい。明日から、実際に文字数を増やしてみましょう。ほかに、やってみたいことは?あとひとつぐらいなら、できそうです」
ミナは時計を見て言った。
「そうだ。今度は術語に頼らずに、質変化してみましょう。土、砂、石と。それとも逆がやりやすいかな?」
「両方やってみる!」
そうしてやってみた結果、石から小さくする方がやりやすいことが判明した。
「なんでだろう?」
「心で思った形を、作りやすいんじゃないでしょうか。土から砂ができるのは、その過程が想像しにくいですけど、川に削られて、ものが小さくなることは、想像しやすいです、私は」
少し考えて、ミナは言った。
「土から砂は、私は、ぎゅうぎゅうに押し固めた状態を想像します。もちろんそれだけで砂にはならないでしょうが、小さいものが大きくなると想像するときは、大抵そんな感じで想像します」
「大きいものから小さいものを思い描くときは削り、小さいものから大きいものを思い描くときは押し固める、と。うん、参考にしてみるよ」
ルークは立ったまま器用に帳面に書き付けていき、顔を上げた。
「もう食事の時間?」
「汗を流したらちょうどいい時間だと思います。今日はもうこれ以上力を使わない方がいいです。力量の限界には遠いですが、毎日限界まで力を使うわけにはいきませんから」
「分かった」
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