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「私は火は、まず蝋燭を置いて、小指の先ほど火を出して、丸く小さくしていきましたよ。最後は消すんですけど、自分で消せない時は、蝋燭に火を移すんです。そうすると、うまく消すことができるんですよ。火を移してしまったから、これでおしまい、って思えたんです」
「思い込ませるってこと?」
「それよりはちょっとした意識なんですよ。蝋燭に移した火…燐寸(りんすん)はすぐに消えるでしょう?それと同じで、火を出し入れするんです。だから消すときは、ちょっと手を振る。燐寸に慣れたら、意識しやすいかもしれないです」
燐寸は、小さな木の棒の先に、可燃性の薬品を固めてあるもので、擦るとすぐに発火するが、何度か振ると消える。
「彩石使わないんだね」
「はい。ただこれは、私みたいに力量の小さな者でないとできないかもしれません」
「そか、ちょっとで出す火が、燐寸よりずっと大きいと、意識しようがないもんね…」
「そうです。あとは…火も伝達することを考えてはどうでしょう」
ルークは目を見開いた。
「火の伝達っ?」
「はい。一瞬のことになりますけど、カザフィスで、空に浮かぶ火を見せてもらったことがあるんです。あちらは、そういう伝達の仕方なんですよ。一面何もないからできることなのかもしれませんけどね」
「なるほど…」
「でも、空高く出現させた火は、小さいと、下に落ちる前に消えちゃうんですよ。大火に繋がるかもしれませんが…例えば、海の上でなら?使えません?」
「あ、そか、使えるかも…」
「修練を水の上でするのは、今までしたことのない試みだから、考えにくいかもしれませんが…そもそも、火をほかの属性と同じように扱おうとすること自体、無理があるのでは?」
ルークは自分の顎に手をやった。
異能の制御だけでなく、属性の見直しもするべきなのか、と考える。
「試しに、船を雇って、レテ湖で修練させてみたらどうでしょう。屋内なら燃えるものがたくさんありますが、周りに何もない…まあ船は通りますが…湖の上なら、安心できないでしょうか」
ルークは、うん、と強く頷いた。
「修練室にこだわることはないんだね」
カィンが言った。
「でも、修練室は必要だと思います。中途半端な広さの屋外より安全ですから」
「そうだね…でも例えば、今日やった土の伝達は、広い屋外が必要だ。修練室だけでない、屋外の修練場が必要なのかもしれない」
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