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「つまり、黒檀塔の鍛練場のような場を設ける?」
カィンの言葉に、ミナが続ける。
「移動式でもいいんじゃない?土は地面が必要だけど、そのほかは湖や、川の上でもいい」
そうして立ち上がると、書棚に行って立体地図を持ってきた。
それを中央の低い机の上に載せると、なかを開く。
「表神殿の西地区はほぼ住宅街ですけど、そこを抜けたシサ川の向こうにサグレの森がありますね。この端っこの木を、悪いけど伐採しちゃって、何もない地面を作って、周囲もいくらか使うとか。そして水は川を使い、火は川を下って湖に出る。風は…木々のなかがいいかなあ?」
「土地開発って感じだね…」
そう言うカィンに頷いて、ミナは顔を上げ、ルークを見た。
「四の宮だけではない、修練場の設置。どうでしょうか?」
「答えを出すには早い」
不意にデュッカが口を出し、続けた。
「まずは土地があるか調べさせろ。そしてどの程度の規模にするのか考えろ。それによっては、四の宮の修練室はまた、サイジャクの使い方を教える程度になるかもしれん。そうなれば、選別師の養成に力を入れられる」
「そか、選別師の行き場が必要なのか」
うーん、とルークは考えた。
「修練場建設事業部…とか必要かな」
「そういう名にしたいならそうしろ。調べて、計画を立てる部署が必要になるだろう。その前に、異能統制事業の規模を見極めねばならんがな」
ルークは頷いて言った。
「うん、取り敢えず、ふたつの部署は立ち上げたんだ。っていうか、設置を頼んできた」
「ならば、それらが働く場が必要だろう。王城にいられる期間はそう長くはない。おまえの事業なのだからな」
ルークは衝撃を受けたようだった。
口を半ば開いて、デュッカを見た。
「僕、そんなことまるで考えてなかったよ!そうだね、王城はアークの仕事場だもんね…」
「建物はすぐには建たん。配属される者たちに、どこでどのような形の働く場を与えるか、考えねばならん」
ルークはきょろきょろ辺りを見回した。
「ぼ、僕どうしよう、やることがいっぱいだ…」
ミナが時計を見て言った。
「まあ、それはまた明日考えましょう。昼から時間が空きますから。今夜はちゃんと寝ないとです」
ルークは、情けないような声を上げた。
「こっ、このままじゃ眠れないよお…」
ミナは笑って言った。
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