巡行開始

17/18
前へ
/274ページ
次へ
「つまり、黒檀塔の鍛練場のような場を設ける?」 カィンの言葉に、ミナが続ける。 「移動式でもいいんじゃない?土は地面が必要だけど、そのほかは湖や、川の上でもいい」 そうして立ち上がると、書棚に行って立体地図を持ってきた。 それを中央の低い机の上に載せると、なかを開く。 「表神殿の西地区はほぼ住宅街ですけど、そこを抜けたシサ川の向こうにサグレの森がありますね。この端っこの木を、悪いけど伐採しちゃって、何もない地面を作って、周囲もいくらか使うとか。そして水は川を使い、火は川を下って湖に出る。風は…木々のなかがいいかなあ?」 「土地開発って感じだね…」 そう言うカィンに頷いて、ミナは顔を上げ、ルークを見た。 「四の宮だけではない、修練場の設置。どうでしょうか?」 「答えを出すには早い」 不意にデュッカが口を出し、続けた。 「まずは土地があるか調べさせろ。そしてどの程度の規模にするのか考えろ。それによっては、四の宮の修練室はまた、サイジャクの使い方を教える程度になるかもしれん。そうなれば、選別師の養成に力を入れられる」 「そか、選別師の行き場が必要なのか」 うーん、とルークは考えた。 「修練場建設事業部…とか必要かな」 「そういう名にしたいならそうしろ。調べて、計画を立てる部署が必要になるだろう。その前に、異能統制事業の規模を見極めねばならんがな」 ルークは頷いて言った。 「うん、取り敢えず、ふたつの部署は立ち上げたんだ。っていうか、設置を頼んできた」 「ならば、それらが働く場が必要だろう。王城にいられる期間はそう長くはない。おまえの事業なのだからな」 ルークは衝撃を受けたようだった。 口を半ば開いて、デュッカを見た。 「僕、そんなことまるで考えてなかったよ!そうだね、王城はアークの仕事場だもんね…」 「建物はすぐには建たん。配属される者たちに、どこでどのような形の働く場を与えるか、考えねばならん」 ルークはきょろきょろ辺りを見回した。 「ぼ、僕どうしよう、やることがいっぱいだ…」 ミナが時計を見て言った。 「まあ、それはまた明日考えましょう。昼から時間が空きますから。今夜はちゃんと寝ないとです」 ルークは、情けないような声を上げた。 「こっ、このままじゃ眠れないよお…」 ミナは笑って言った。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加