命令書

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命令書

『異能統制事業を始めるにあたり、祭王ルシェルト・クィン・レグナより宰相ユラ-カグナ・ローウェンに命じる。 以下の部署を設置せよ。 ひとつ、異能制御管理部 主な役割 異能制御技法調査(王城書庫管理部に委託) 異能制御技法統括 異能制御技法執行(一部、四の宮、四の小宮の修練室に委託) 異能制御事故対応 ひとつ、術語総合管理部 主な役割 術語調査(王城書庫管理部に委託) 術語開発 術語編纂(へんさん)(王城書庫管理部に委託) 術語教育 術語事故対応 以上。』 その命令書を読むと、アークは顔を上げた。 ルークたちが出発した後すぐ、ユラ-カグナが持ってきたものだ。 「分かったわ。部屋は南棟の2階が空いていたわね。そちらを使わせてちょうだい」 ユラ-カグナは書状を受け取りながら、言った。 「今はそれでいいが、いずれどこかに移動させる。希望する場所があるか?」 アークは肩をすくめてみせた。 「どこにも行くところなんてないわよ。空いてる建物なんてないんだし、ここでいいじゃない」 レグノリア区はよく整備された街だ。 国の主要機関は中心部に近く配置され、周辺の建物には、代々続く店舗が多く、空いている建物はないと言っていいだろう。 緑地はあるが、空地と言えるものはなく、新たな者が入ってくる余地はない。 ユラ-カグナは、静かにアークを見つめ、目を細めた。 「身近に置きたいのは解るが、まずここは政王の場だ。そして、ルークがお前の仕事に口を出さないように、お前はルークの仕事に口を出せない。出していると思われてはならない。さらに、公私を混同していると思われかねない状況を作ることは避けなければならない。判っているだろうがな」 アークは俯いた。 心配などではないのだが、近くにいたかった。 「希望がなければ、適当な場所を見付けて建てる。いいな」 アークは、不承不承、頷いた。 「ところで、ザクォーネの王…サラナザリエ様が今週中に来られる。視察団の帰国に伴われるそうだ。また一歩進む。準備はいいか」 その言葉に、アークは頷いて気を引き締めた。 「もちろんよ。御在位68年と言ったかしら。判断の甘い者と見られないようにしなければね」 立場は対等でも、その年月の厚みは違う。 気圧(けお)されることがないようにしなければ。 「ああ。滞在期間は2週間らしい。色々と見ていただきたい。同行するか?」 「えっ、いいの」
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