命令書

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「それはないだろうが、だとしたら小さな子の体力しかないのかもしれない。逆の気遣いが必要かもしれないな」 「なっ、なるほど…」 「そういったところだ。他の方面からも何を言ってくるか判らんからな、仕事はできるだけ進めておけ…今日はこんなところだ。では俺は戻る」 「分かったわ、ありがとう」 ユラ-カグナは頷いて、テオとともに政王執務室を出た。 そうして、宰相執務室に入り、奥にある執務机の前に座ると、手に持った命令書をテオに渡した。 「そのように進めるから、準備をしておいてくれ」 テオはそれを読んで、言った。 「分かったよ。まずは人員の確保だね」 「どうするつもりだ?」 テオは考えるように言った。 「作成室の者を術語編纂(へんさん)に、収集室の者と調査室の者を術語調査と異能制御技法調査に回し、足りない人員は王立技能学校から引き抜いて、通常の書庫業務に()てる」 ユラ-カグナは頷いた。 「そういったところだろうな。部屋の用意ができたら知らせる」 テオは備え付けの用紙に必要事項を書き留めて、わくわくするね!と言った。 「それにしてもルークは、どうして突然こんなことを思い付いたんだい」 「ミナの発案だ」 ユラ-カグナはため息ともつかない言葉を発した。 「なにっ、またかいっ?」 「ああ、また…俺は政王の元にあるが、祭王との調整役でもある。まだ試験段階とはいえ、先のことを考えなさすぎだった」 本来なら自分が気付いて当然のことだった。 正直言って、祭王がひとつの事業を立ち上げるほどに動くとは、思いもよらなかった。 やるのならば、政王の仕事だと思っていた。 だが、ルークの決然とした様子を見て、考え違いに気付いた。 異能は政治ではない。 祭王の領分なのだ…。 「とにかく、この件はアークではなくルークの領分だ。報告などはルークに上げてくれ」 「了解した。ではまた、人員が確定したら知らせるよ。じゃあね」 そう言ってテオが部屋を出ていくと、ユラ-カグナはルークの命令書に基づいた指示書を作成し、隣室から伝達係を呼んで持って行かせた。 それからしばらく各書類の作成、照査、承認、閲読をして、昼前に人事管理部に向かった。 人事管理官ティト・メルは縦にも横にも大柄な男で、ユラ-カグナを見て椅子から立ち上がった。 「先ほどの指示書の件か?進めているよ。今年15歳になる子も含めて集める予定だが、問題ないな?」
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