10人が本棚に入れています
本棚に追加
「それはないだろうが、だとしたら小さな子の体力しかないのかもしれない。逆の気遣いが必要かもしれないな」
「なっ、なるほど…」
「そういったところだ。他の方面からも何を言ってくるか判らんからな、仕事はできるだけ進めておけ…今日はこんなところだ。では俺は戻る」
「分かったわ、ありがとう」
ユラ-カグナは頷いて、テオとともに政王執務室を出た。
そうして、宰相執務室に入り、奥にある執務机の前に座ると、手に持った命令書をテオに渡した。
「そのように進めるから、準備をしておいてくれ」
テオはそれを読んで、言った。
「分かったよ。まずは人員の確保だね」
「どうするつもりだ?」
テオは考えるように言った。
「作成室の者を術語編纂に、収集室の者と調査室の者を術語調査と異能制御技法調査に回し、足りない人員は王立技能学校から引き抜いて、通常の書庫業務に充てる」
ユラ-カグナは頷いた。
「そういったところだろうな。部屋の用意ができたら知らせる」
テオは備え付けの用紙に必要事項を書き留めて、わくわくするね!と言った。
「それにしてもルークは、どうして突然こんなことを思い付いたんだい」
「ミナの発案だ」
ユラ-カグナはため息ともつかない言葉を発した。
「なにっ、またかいっ?」
「ああ、また…俺は政王の元にあるが、祭王との調整役でもある。まだ試験段階とはいえ、先のことを考えなさすぎだった」
本来なら自分が気付いて当然のことだった。
正直言って、祭王がひとつの事業を立ち上げるほどに動くとは、思いもよらなかった。
やるのならば、政王の仕事だと思っていた。
だが、ルークの決然とした様子を見て、考え違いに気付いた。
異能は政治ではない。
祭王の領分なのだ…。
「とにかく、この件はアークではなくルークの領分だ。報告などはルークに上げてくれ」
「了解した。ではまた、人員が確定したら知らせるよ。じゃあね」
そう言ってテオが部屋を出ていくと、ユラ-カグナはルークの命令書に基づいた指示書を作成し、隣室から伝達係を呼んで持って行かせた。
それからしばらく各書類の作成、照査、承認、閲読をして、昼前に人事管理部に向かった。
人事管理官ティト・メルは縦にも横にも大柄な男で、ユラ-カグナを見て椅子から立ち上がった。
「先ほどの指示書の件か?進めているよ。今年15歳になる子も含めて集める予定だが、問題ないな?」
最初のコメントを投稿しよう!