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「ああ。あと、どんな具合になるのか聞いておきたい」
「ちょっと待ってくれ…ハサム君!来てくれ」
呼ばれて、ハサム・デオは急いでティトの元へ来た。
「はい、どのようなご用件でしょうか」
「先ほど見せてもらった配置図をユラ-カグナに渡してくれ」
「はい。少々お待ちを…」
そう言って、自分の机に行き、1枚の紙を持ってきた。
「書き付けですが、これでよければ…まず、役割ごとに10人と考えています…」
言っている間に昼の鐘が鳴り、ユラ-カグナとティトとハサムは共に食事を摂ることになった。
「…それにしても、ルシェルト様が動かれるとは…どれだけ大きな事業なんだい」
「ルークと呼んでやれ。指示書を読んで大体想像が付くと思うが、異能の制御と術語の管理を目指している。制御の仕方を統一し、希望者だけでなく国民全体に行き渡らせること、それがまず第一だ」
ティトは半分口を開けた。
「それは…学習場を作るようなものか…!」
学習場とは、アルシュファイド王国においては、人々が生活するのに必要な文字の読み書き、数の数え方、計算の仕方、地理など、基本的なことを教える場のことだ。
これは地区ごとにあり、11歳までに、知識が規定の水準に達するよう学習することが定められている。
「そうだ。だから執行室には、教える者が必要になってくる。今は四の宮で対応しているが、学習場のように施設が増えれば、配置する人員が必要になってくるわけだ」
執行室…異能制御管理部のひとつで、異能制御の技法を、実際に運用する部署だ。
「それで、執行室には教育担当と執行担当がいるのか。教育担当は、例えば学習場に配置するとすごい数になるな…」
「そうだ。だが今のまま、四の宮や四の小宮で教えることを想定している。あとは、黒檀塔、士官学校、技能学校などで教え、国民全員に試験をすることで一定の異能制御を行き渡らせてみてはどうかと俺は考えている」
「執行担当は、その試験の実施…か?」
ユラ-カグナは頷いた。
「それに、教育の場の設置など、執行に際して片付けるべき問題への対処などだ。分けることも考えたが、ひとまとめのものだと思ったので、執行室のなかに置いた」
ハサムが、箸を置いて机の端で手帳に何やら書き付ける。
それを見て、ティトは笑った。
「どうやらあの指示書では適切な人員が判らないらしい」
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