命令書

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ユラ-カグナは考えてみた。 今回の試みは大変な仕事だ。 若い力に賭けてみるのもいいが、ある程度の経験はある方が、ルークは助かるだろう。 「君が抱えている仕事はないのか。君自身が進めている計画は」 ユラ-カグナの言葉に、ナイエスは頷いた。 「大きな計画としては、技能学校と各職業で連携して、卒業前から見習いとして一定時間働かせる、というものがありますが、これを進めているのは副長官のピートで、私は承認するだけになっています」 「君の後任には誰を推す?」 「副長官、ピート・カノンを推します。32歳でやや早いですが、早すぎるというほどでもない。実力も、あります。同じく副長官のレット・ジェンジーに補佐してもらえば、充分やっていけるでしょう。ふたりの意向は確認してきました」 ユラ-カグナは自分の顎に手をやった。 この国で省庁の長官に就任する者は、35歳から40歳が多い。 確かにやや早いが、無理はない。 「君は何歳だ?」 「36歳です。若くはないですが…」 「いや、充分若いよ」 ティトは言い、考えた。 確かにこれは、適任かもしれない。 「異能制御管理官と術語総合管理官を兼任か…」 ユラ-カグナの呟きに、ナイエスは大きく頷いて言った。 「そのふたつは、あとには大きく分かれるでしょうが、始まったばかりの今は、立ち上げに共通する部分があるはずです。例えば、場所」 ナイエスは身を乗り出した。 「異能制御には四の宮などの修練室が使われるようですが、それでは足りない。術語の教育にも、新たな場所が必要です。このふたつは、同じ場所で教える方がいいと思います。ならば施設の長は、1人でなければ」 「統合すべきだと?」 そう聞くユラ-カグナに、ナイエスは首を大きく横に振った。 「いいえ!同時に立ち上げるだけで、いえ、密接に関わってもいますが、このふたつは別物だと思います。そういう関係だからこそ、最初の立ち上げは(ちょう)を同じくして、協力する体制でかかるとよいと思うんです」 「例えば?」 「例えば、術語開発をするのなら、異能の制御が完璧でなければならないでしょう。そして、異能の制御が不完全な場合、術語に助けてもらうこともできます。つまり、情報や技術を共有しながら、各々の目的を果たすんです」 ナイエスは息を切って、続けた。
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