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「例えば、土を変えるのはどうです?柔らかい土から、固い土へ、或いは、土、砂、石へと。私が一昨日ルークに作ってみせたのは、心象なんですけど。制御の場合は、そのものを作り上げるんです。どうでしょう?」
「そんな変化やったことない。土は土で出して、砂は砂で出してる。一度作った物は変えにくそうだよ」
ルークが困ったように言って、ミナは少し考えるようだった。
「でも力量はあんまり使わないんですよ。そうですね…自分で自分を誘導するんならどうです?」
「誘導?それこそミナでもないと…」
カィンに言われて、ミナはちょっと笑った。
「言葉でだよ。術語は言葉で自分を縛る。誘導は縛るんじゃなくてね、川を作るんだよ。力は水。川に沿って低いところへ落ちるもの」
ミナは考えてみた。
誘導に適当な言葉。
「例えば、こう。カィン、お願い。まずは石を出す。ありがと。そう、石だから、まあこぶし大だよね。砂はそれを小さくしたもの。川に流されて、ころころと転がって、端から削られて、段々と角が取れて、小さくなる。小さく、小さく、どんどん小さく」
カィンの手のなかの石が見る間に小さくなり、砂粒になった。
「どう、制御になってる?」
カィンは首を傾げた。
「うーん、言われた通りやっただけで、実感ないな…」
「まあ、制御って訓練だから、すぐには成果出ないけどね」
ミナは首を傾けて、でもこれじゃ質変化じゃないな、と言った。
「これはこれで使える気もするけど…」
ルークは背もたれの後ろに設えてある、寝台の上に置いた荷物のなかから、帳面を取り出した。
「ちょっと待って!書き留める!どこからが誘導?」
「最初の大きさからですよ。こぶし大。それは見て判りますから、捉えやすい。そして目指す形を頭の隅に置かせる。砂という言葉。そこから、変化の工程を思い描かせる。川の流れ。川底を転がる石。まず角から取れて、小さくなる。小さく、小さく、同じ言葉を繰り返す」
ルークはそれを書き留めて、顔を上げた。
「そもそも、質変化ってどうするの?」
「ただ思うだけですよ。ああ、目を閉じたらいいかもしれない。すでにある形にこだわらないで、頭に思い描く。土、砂、石と」
ミナは少し考えて言った。
「これなるは変転球。土は砂に、砂は石に、石は土に移り変わる。どうでしょう?」
「やってみる!」
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