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ルークは帳面を膝の上に置いた。
目を閉じて、両の手のひらを上向ける。
「言葉を発するときに、土、砂、石を思い描きながらやってみてください」
ミナの言葉に、ルークは大きく頷く。
「分かった!これなるは変転球」
ルークがそう口にした瞬間、透明な球が出現した。
「土は砂に、砂は石に、石は土に移り変わる」
ルークが目を開ける。
手の上には、土から砂に、砂から石に、石から土に移り変わる球体があった。
ルークは興奮して叫んだ。
「できた!」
「うーん、すぐできたというのはいいのか悪いのか…」
ミナがそう言って、ルークは、はっとした。
できることよりも、制御することだ。
カィンが言った。
「制御が訓練なら、できようとできまいと、繰り返すことが肝心なんじゃないかな」
「それもそうか…」
ミナが呟き、ルークは勢いづいた。
「これも書いておくよ!変転球って使えそうだね!結界にも使えるかな!」
「そうですね…移り変わるものに関しては、使えるかもしれません…でも段階的にと言うなら、例えば杯、汁椀、中皿、大皿、という具合に、出量を調整する方がいいのかもしれませんね。んー、加増せよ、片手から両手、両手からひと抱え、ひと抱えから小山、というのはどうでしょう。土を出すんです」
「やってみる!」
ミナは慌てて止めた。
「あっ、だめですよ!いくら使っている力量が少量だって、積み重ねれば結構な量になります!今日はこれから修築が待ってますよ!」
そう言われて、ルークは、はっと動きを止め、肩を落とした。
「そっ、そうだよね…僕、忘れてた…」
ミナは仕方なさそうに笑って言った。
「修築が終われば、それでもやり過ぎは禁物ですけど、できます。それまでちょっと待ちましょう」
「分かった。それにしてもよく次々出てくるね?本読むより早いよ…」
ミナは困ったように笑った。
「本にあるのは効果が確認されていますから、私の予想よりずっと役立ちます。私…」
言葉を途切らせて、ミナは顔を赤くした。
「私、口出ししてごめんなさい。本読む邪魔しちゃって」
ルークは身を乗り出して言った。
「ううん!話してる方がずっと楽しい!あ、楽しい楽しくないの問題じゃないか…」
あはは、と笑いながら、ルークは身を起こした。
「君と話すのも大事な気がする。ミナは質変化ってよくやるの?」
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