ヤオ・ウィック

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   それからレガンと私は別れて、レガンが休息に入ったのを確認し、再び茂みの中に潜る。そして、少しだけ私も休息をとった。  夜が明ける。  勇者一行はぼちぼちと目を覚ましていた。私は息を潜めることに完全に集中する。おや、レガンの様子が見当たらない。私が少しだけ寝ていた間にどこかに行ったか? いや、まあソフィンの姿が見えるので仮にレガンがどこかへ行っていたとしても問題は無い。むしろ嬉しいくらいだ。  なんて思っていたらレガンの姿が見えた。畜生とか、一瞬思っただけ。  レガンの元々気難しそうな顔がより難しくなっていた。もしかして、昨日私と会い、会話をしたことを夢かなにかと勘違いしているんじゃないだろうな。こういう時にテレパシーとかで頭に直接話しかけることが出来たなら、と思う。残念ながら、私にはそういう能力はない。我ながら惜しいものだと思う。そのうち手に入らないだろうか。  というか、冷静に考える。  流れでレガンにリューシャよろしくなんて頼んだけど、リューシャがレガンの前に姿を現すとは限らない。恐らくリューシャは私の存在を知らないだろうから、てっきりもうソフィンを倒してしまっているだろうなんて思い込みをしていて高笑いをしている最中かもしれない。うーん、有り得る。しまったな。完全に考えていなかった。リューシャの行方を負った方がいいだろうか。いや、追わない。恐らくリューシャはもう一度、レガンの前に姿を現す。その時に、倒してもらおっと。  昨日と同じように勇者一行は道を進んでいった。私もゆっくり追いかける。レガンの様子は特におかしくはない。安全だ、そう確信しながら、けれどもいつ心変わりをしてしまうか分からないのでやはりどこかで警戒しながら後をつける。  ……そういえばさ、カナリア姫どうしよう。  完全に姫のことを忘れていた。姫は今恐らく魔王の手元にいる。魔王との最終決戦時に再会するなんてパターンなのかもしれないけれど、一応無事は確認しておかなくてはならない。気がする。  まあ多分魔王もそこまで非道ではないはず。攫った姫を秒で殺すなんてことはしないはず。多分魔王だって魔王だし、こいつがどうなってもいいのかみたいな感じで姫を人質代わりにするだろう。  けれどなぁ、やっぱり不安だ。うん、レガンを完全に放っておけるようになったら一度姫の安否を確認しようか。
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