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まあ、そんなこんなでひたすら追っていると特に街につくわけでもなく、やはり昨日と同じように野宿をすることになった。
そして昨日と同じように、再びレガンがどこかへ向かう。よかった。多分この感じ、リューシャだ。リューシャが来るに違いない。私はそっと追いかける。
昨日とは少し違い、やけに葉が茂っているところでレガンは止まった。同時に、女が、リューシャが降ってくる。「ねえ」リューシャはやけにご機嫌そうだった。しかし、レガンの曇りきった表情を目にし、なにか異変を感じ取ったのか、リューシャの表情も僅かながら曇った。
「…どうしてそんなに迷いがあるの? 昨日まではあの勇者を殺す気満々だったっていうのに」
レガンはリューシャに必要以上に近寄らずにいた。「どうしたっていうの? まさか――――私が今更怖くなった?」
「――あなたは、あなたは!」レガンが剣を抜き取った。
「………何をする気?」リューシャはレガンからわずかに距離をとった。
「騙しているんだ……俺が、馬鹿だった。あっさりと、魔王の配下であるお前を信用した俺が!」
レガンはそう言って、うおおと唸りながら剣をリューシャに突きつけるようにして突進した。
リューシャは薄く笑うと、その剣を呆気なく片手で受け止めた。「なっ……!」
「……私が騙したって? 何を根拠もないことを言っているの」
リューシャの瞳は、怒りに燃えていた。
「誰に何を言われたのか知らないけれど、私はあなたを騙していないわ。あなたを利用しているだけ」
レガンは力を抜くことをしない。
「……もういい。私も、馬鹿だったわ」
そう言ってリューシャは剣をへし折った。レガンは目を見開く。
「ねぇ、忘れていない? 私は魔王三幹部よ。アンタみたいな騎士が私を易々と倒せると思ってる? だとしたら、相当な馬鹿よ」
「俺は、俺は国に選ばれた騎士だ!」
「知らないわよ」
次の瞬間、反論する間もなくレガンは消失した。先程までレガンがいた場には、小さな宝石が落ちていた。
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