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寒気が背中を走る。
やばい。こいつ、やばい。
魔王三幹部を舐めていた。まさか、まさかレガンがやられるとは思っていなかった。
予想外の出来事に私は今困惑していた。
リューシャは静かに宝石を拾う。
「……濁ってる」
そう言って、リューシャは宝石をその場に放り捨てたかと思うと、足でそれを踏み潰した。パキリ、とリューシャの足元から音がする。リューシャの足が上がったその場には、粉々に砕け散った宝石が月の光に照らされて僅かに輝いていた。
予想、外すぎる。
魔王三幹部、リューシャがそんなやばい能力を持っているとは。これはまずいな。間違いなく勇者一行だって宝石にされてパキリだ。どうしてわざわざレガンを使おうとしたのか、謎すぎる。
いや、そんなことはどうでもいい。この現状、どうする。
緊急事態だ、この場で逃がすわけにはいかない。仕方ない、本来ならば魔王三幹部クラスの相手は普通勇者がビシッと倒すべきだろうが(もう一度言うが)緊急事態だ。グズグズ言っている暇はない。正直勇者のカッコいいところなんて私は見なくたっていいんだ。私はただあの勇者に「どうか仲間にしてください」ということが出来ればいいんだ。その勇者がいなくなるなんて、考えただけで涙が溢れ出てくる。
駄目だ。絶対に勇者を殺させはしない。ならば、ならばならば。
私が倒すしか、ないだろうが。
ヤオ・ウィックは女魔道士という設定(なんて言ってしまうとなんだかまずい気もするが)なので武器はいらない。
私はとりあえず急いでリューシャの前に姿を現した。
「あら、こんな時間にこんな所でお嬢ちゃん、どうしたの」
先ほどとの悪女っぷりとは一変、めちゃくちゃ優しいお姉さんっぽい雰囲気を醸し出してきた。私は睨む。ただただ睨む。
「なぁに? ……もしかして、さっきの、見たっていうの?」
私は静かに頷いた。
「フフ、隠さないのはいいことよ。でもね、見ちゃったのは悪いこと…」
リューシャが最悪の笑みを向けてきた。
「お前も、同じようにしてあげる」
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