ヤオ・ウィック

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  「''ブリザード''!」  私は叫ぶ。氷の魔法、''ブリザード''の名を。  ''ブリザード''は初級魔法。誰でも使えると言われる初級魔法に入る。ハハッ、絶対勝てるわけないだろ、えっお前もしかして初級程度しかつかえねーの? だっせぇー! とか思うかもしれないが決してそんなことは無い。私だ、無駄に強い私だ。剣術以外も余裕で楽々使いこなせる。つまり、魔法だって上級魔法を使える。  それでも何故私は初級を使ったかって? フフン。それは。 「なぁに? そんだけしかつかえないの? 戦い甲斐無さすぎってぇの」  そう! こう思わせるためである。  ヤオ・ウィックはどちらかと言うと子どもっぽいのジャンルに入る女性。大人のお姉さんリューシャにただのクソガキと思わせて、若干の油断をさせる。その時に、一気に魔法をぶち込めば恐らく、奴を倒せる。  というか、そもそも謎が生まれる。  宝石に変えるあの能力、魔法じゃないのだろうか? リューシャが宝石とか思えば宝石になるのだろうか。そう考えたら今頃勇者は宝石だろうから多分それはないに違いない。うーん。恐らく、私がまだ知らないときに二人は出会っていて、その時にこっそりかけたのかもしれない。だから私は、探りを入れる。 「ねぇ、早く宝石にしなよぉ」  余裕たっぷりの表情を繕って言う。本当は余裕など微塵もない。むしろ恐怖しかない。やべーんじゃね、ヘタしたら私死ぬんじゃねとか思ってます。怖いよう。  リューシャは舌打ちした。あっ待ってまだ宝石にしない――「アホじゃないのね、お嬢ちゃん」 「えっ?」思わず本音がポロっと。 「あれでしょう、あなた、探りを入れたんでしょう」  う、うん、図星。  リューシャはふうっと息を吐く。そして、優しい笑みを向けた。 「戦うのを、やめましょう」  リューシャは両手をあげた。戦意喪失したかこいつ。まぁ、私は基本非道なものではないので私も両手をあげた。 「よろしい。ねぇ、お嬢ちゃん。私と手を組まない?」 「は?」  マジで?
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