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「ねぇそうよ、そうしましょうよ」
リューシャが意外とノリノリになって言ってくるものだから、いやぁ困るわぁ。なんでそう、君たちは上の上とか裏の裏とか、とりあえず予想外な展開を引っ張り出してきちゃうのさ。
「お嬢ちゃん、勇者の仲間なんてことないでしょう?」
「……仲間、ではない。なる気もないし、なりたくもない」
事実! それは紛れもない事実!
「ウフ、上出来」
リューシャが近付いてくる。
「ねェ。私はリューシャ。魔王三幹部の一人」
リューシャがいやらしい手つきを見せながら、私の腰あたりに両手を添える。
「あなたは?」
その手をゆっくりと、片手を上に、片手を下に這わせる。ホントいやらしいわコイツ。つーか相手女の子ですよって。まあ、私には男だろうが女だろうが効かないがな。
「……ヤオ…ヤオ・ウィック」
無表情で答える。あえてちょっといやらしいに対抗してもよかったのだがなんだか敗北感が襲ってくるのでやめておいた。
「そう……ああ、可愛い瞳、綺麗な髪」
下にしていた片手を頭に添えた。予想通りでもう片方の手は胸あたりで這うことをやめる。やめろ、解説がトンデモなことになってそうで嫌なんだよ。
「ねェ、そう、手を組みましょう…一緒に、勇者を倒しましょう」
だが私は容赦をしない。
「確かに私は勇者の仲間になりたくないと言った。しかし勇者を倒すとは言っていない」
リューシャの表情が固まる。余裕とは違った形になったがまあいい。私はとりあえずリューシャを倒して再び楽しみに集中しなくてはならないからな。
「''テラブリザード''」
私は並の魔道士では使えない、賢者をも上回る。それこそ魔王とかしか使えないんじゃねぇのとか言われる魔法の中の最大にして最高級、まあ最上級の魔法、''テラ''級をリューシャに向けて放つ。
「なッ……!」
リューシャはみるみる身体が凍っていく。私はリューシャの手から離れた。
「私の楽しみを邪魔した罰は大きいのだよ!」
こうして呆気なく、私はリューシャを倒して除けた。残念ながら、レガンを救うことは出来なかったが、まあ私の楽しみを救えたのでよしとしようじゃないか。
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