ヤオ・ウィック

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 粉々の宝石。その近くには氷に閉じ込められているリューシャ。  私はリューシャなどに見向きもせず、宝石を見つめる。ウーン、ただの宝石。凄いな、本当に宝石にしてしまったのか、この女。本当に、ただの宝石に。 「おい、お前」  私はリューシャに呼びかけた。「死んではいないだろう? 殺してはいないからな。喋ることができるだろう」  リューシャは喋らない。思わず舌打ちが出る。 「おい」  私は氷を蹴った。僅かに欠ける。「この調子で身体ごと砕くことになるが、悲鳴は出ないだろうな」 「ヒッ……! そ、それだけはっ…!」 「なんだ、喋れるなら最初から話せ」いや、本来私こんなキャラじゃないんだけど。 「おい、この宝石、別にあの騎士ってわけじゃないだろう? ただの宝石だろう?」 「……」 「砕くぞ」 「ヒィッ! そうよっ、そうですよぉっ!」  ふむ。やはり。  そもそも聞いたことがないのだ。あの状況に直面した時はもうそれはびっくりして頭が回んなくて寒気が走ったが冷静に考えると人を価値ある宝石にする魔法など、いや、技など私は聞いたことがなかったのだ。だから、気になった。 「だったら……レガンはどこへ行ったんだ?」 「………どこか遠くに転移させたのよ」  えっまじで、普通にいい技じゃねぇかよ。 「…何? 所謂、詠唱なしでテレポったってわけ?」 「詠唱は事前にしていたわ」 「あ、そっか」  別に魔法は詠唱が終わればすぐ発動しなければならないというわけじゃない。ある程度はためられる。ただその時間が長ければ長いほど身体にその魔法に必要な魔力以上の魔力がどんどん蓄積されていくので相当な精神がないとあまりもたないが。 「……言うことはもう言ったのだけれど。出してくれるかしら」 「いつそんな約束したっけ」 「非道め!」 「ハハッ。まぁご協力ありがとね。もう、邪魔しないでくれるかな」  私は氷を再び蹴る。リューシャは相変わらずヒッ、と声を出した。 「次に勇者の前に現れてみろ。この宝石みたいにしてやるから」  リューシャの半泣きを拝み、私は勇者一行の元へ向かった。
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